『ごろごろ、神戸2』『ごろごろ、神戸3』

『ごろごろ、神戸2』『ごろごろ、神戸3』は2017年5月から2019年4月まで本ブログ管理者である平民金子が執筆し神戸市広報課サイトにて連載されたコンテンツです。現在神戸市広報課サイトに本コンテンツは掲載されておりませんので、このたび神戸市さんのご好意により本ブログへの転載許可を頂きました。記事の著作権は神戸市にありますが、書かれた内容についてはすべて執筆者にお問い合わせ下さい。本コンテンツに大幅に加筆をした『ごろごろ、神戸。』が株式会社ぴあより出版されています。そちらもよろしくお願いします。

2017-01-01から1年間の記事一覧

第32回 キラキラ

クリスマスシーズンの百貨店、子供用品やキッズコーナーがあるフロアのオムツ替えスペースに行くと、乳幼児とその母親、祖母という組み合わせが多く(つまり女性が多い)、入ったとたんに「むわっ」とするような、男性だらけの空間に独特のにおいがあるよう…

第31回 商店街や市場あれこれ(前編)

神戸の西っかわに塩屋という海と山に挟まれた小さな町があって、先月そこで行われた「しおさい」というお祭りのトークイベントに呼んでいただいた。テーマは「商店街や市場あれこれ」。同席した森本アリさんは築100年を超える洋館旧グッゲンハイム邸の管理人…

第30回 犬の話

1975年生まれの私が子供の頃、町にはもう野良犬はほとんどいなかった。とはいっても時々は、通学路をふらふらと歩く飼主不明の犬がいて、学校の帰りにパンをやり、そのままついてこられて困ったり、なついた犬を住んでいた集合住宅に連れ帰って親に怒られた…

第29回 すべり台

手足ばたつかせるだけだった赤ちゃんがいつの間にか寝返りを打ち、ハイハイし、やがて立ち上がって不器用に歩き出す。歩くことを覚えてからというもの、ずっと一日中あっちへこっちへと動いているものだから、ついて歩くこちらが先にバテてしまい「子供の体…

第28回 ありがとう、神戸マラソン

11月19日、日曜日。ようやくこの時がやって来た。「感謝と友情」をテーマに、「ありがとう」をキャッチフレーズにした、神戸市民なら誰もが待ち望むイベント『神戸マラソン2017』(https://kobe-marathon.net/2017/)がついに開幕である。私たちごろごろ神戸…

第27回 つかれた背中を流す日

国語辞典ほどの分厚さがある豪華な黄色い箱に入った『初期のいましろたかし』という漫画作品集が発売されたのは、私が東京の四畳半風呂なし便所共同アパートで暮らし始めて間もない2002年の夏で、当時オープンしたばかりのジュンク堂池袋本店でこの本を買っ…

第26回 神戸港灯台巡り

11月1日は灯台記念日らしい。私はこれをてっきり、最近になって神戸市が数字の「1」を灯台に見立てて適当に作ったものだろう……なんて思っていたのだが、無知もいいところ、ウィキペディアを見ると1868年に日本で最初の西洋式灯台が横須賀で起工されたのを記…

第25回 届かない感じ

妻が知人の結婚式に出る準備を始めている横で、「結婚式といえばライスシャワーやなあ」などと適当な事をつぶやいていると、なぜ普段から冠婚葬祭の行事には一切参加しようとしないあなたがライスシャワーなんていうシャレた言葉を知っているのか、と驚いて…

第24回 雨の動物園、台風の夜

雨の日は動物園に行くに限る。普段ならにぎわっている週末の午後。トラやライオン、ゾウ、パンダといった人気者たちの前にもこんな日は誰もおらず、遊園地エリアに行っても濡れた遊具に乗ってわざわざ遊ぶ人はいない。静かに降る雨の中で、止まったままのメ…

第23回 「母親」を半分引き受ける

初めての立ち飲み屋デビューは確か生後3か月くらいの頃。以来私は抱っこしながらであれベビーカーに乗せながらであれ、ホルモン屋や串かつ屋、寿司屋に焼き肉屋、さまざまな「酒の飲める場所」に子供を連れて行っている。飲みに出かける回数自体は激減してし…

第22回 ポートタワーに登る日

それほど頻繁に他人と会っているわけではないが、それでも人に会うたびにメリケンパークに設置された「BE KOBE」の良さを説いている。しかし相変わらず、長く神戸に暮らす人からは「そうですよね。あそこは最高です」といった全面的な同意が得られる事はない…

第21回 鳴尾浜球場に行った話

神戸に住んでいるからにはふらっと散歩に行くような気やすさで阪神電車に乗り、タイガースの応援に行きたい。そんな事を考えながらもこの2年間は育児で手一杯で、球場に行くどころかせっかくサンテレビのお膝元だというのに野球放送すら見られていない現状だ…

第20回 須磨海岸でゴミを拾うこと

夏の間にすっかり世話になった須磨海岸も海水浴シーズンが過ぎれば人の出入りは少なくなり、代わりにと言ってはなんだが捨てられたり流れてきたりしたゴミや枯れ木が目立つようになった。昔の自分なら「だからどうしたの?」という風で、こういう場所に散ら…

第19回 あの日、あの時の動物園

ハーバーランドumieにある大垣書店で買い物をしていると、探していた本と同じ棚に成田一徹『新・神戸の残り香』(神戸新聞総合出版センター)があって、それをなんとなく手にとってパラパラとめくってみれば普段から私がよく行く場所が多数切り絵作品として…

第18回 ライスカレーの夢

カレーといえば、ルーを自作したり、玉ねぎをあめ色になるまで炒めたり、野菜をたくさん入れて長時間煮込んだり、かくし味を入れたりと、これまでひと通りの工夫はしてきたが、最近は市販の箱入りルーを買って、箱の裏に書かれた調理法通りにしか作ってない…

第17回 坂バスの走る町

灘区を走る「坂バス」が気に入って、用もないのにこのバスに乗っている。山があって、海があって、その間に坂道があって人々の暮らしがある。そんなぼんやりとしたイメージを「神戸らしさ」と呼んでもいいのなら、坂バスの窓から見える商店街の人々の行き交…

第16回 一時間で神戸案内

「東京に行く途中で一時間ほどそちらに立ち寄るから、神戸を案内してほしい」つい最近、九州に暮らす身内夫妻からそのような大雑把な頼みごとをされて、若干の面倒くささを感じながらも春先から神戸関係の本ばかり読んでいた私はすぐ、これは陳舜臣『神戸も…

第15回 涼風ジョニー

今から私は、あまり書きたくない情報を書くのだが、最近、神戸の楽園を見つけてしまった。それはどこか。1枚目、この写真だけを見て場所がわかる人はいるだろうか。 小出しにしても仕方がない。楽園とは、王子動物園の放養式動物舎(類人猿エリア)、2階の休…

第14回 メリケンパーク、行くのがめんどくさい問題

どう考えてもメリケンパークの最大の弱点は、駅からのアクセスのしにくさだろう。距離的な問題以上に、途中で高速道路が立ちふさがっているため、なおさら遠い感じがする。人呼んで「メリケンパーク、行くのがめんどくさい問題」である。ただその事について…

第13回 神戸、安いかき氷特集

子供の頃は、夏休みともなると近所の駄菓子屋などで売られているカップ容器のかき氷を毎日のように食べていた。しかし成長するにつれだんだんと食べなくなったのが先か、近所から子供の小遣いで買えるような安いかき氷を売る店がなくなったのが先か、いずれ…

第12回 夏とはつまり……(須磨ドルフィンコーストプロジェクト)

大人になると、夏は純粋な夏となる。そう、恋の予感や冒険の予感といった不純物が抜けて、暑さだけが残るのだ。夏とはつまり、苦痛である。 そんな事を考えながら、テラスでよく冷えたシャンパンを飲んでいると、さっきまで寝ていた子供が私のところにやって…

第11回 「あんぱんまん」

一番古い記憶は4歳ぐらいの時で、幼稚園が終わってからのバスの送迎で母親が停留所までむかえに来るのが数分遅れた事にひどく腹を立てた、という些細な風景だ。その次に強く残っている記憶が6歳の小学校入学式の時で「隣に座っていたH君が骨折した腕を三角巾…

第10回 スマ!スマ!スマ!

先月の話になるが「須磨浦山上おんがく祭」という楽しそうなイベントがあったので、妻子を伴って出かけた。会場は須磨浦山上遊園の「ふんすいランド」…てどこやねん。インターネットで経路を調べると、会場に行くまでにロープウェイ? カーレーター? 観光リ…

第9回 ニセ神戸人宣言

十代の頃から根無し草の気楽さであちらこちらと住処(すみか)を変えていた私にとって、週に一度とはいえ自分の住む神戸市について、まるで定住者のごとく何ごとかを語っている今の状況というのは非常に居心地の悪いものだ。先日、初めて新開地に来たという…

第8回 市場のある風景

古い町なみを壊してしまうのは簡単だ。 神戸に住み始めてこの2年数ヶ月の間に、私の狭い行動範囲だけでも稲荷市場のアーケードが残っていた部分と、宇治川の毎日市場がなくなった。どちらの市場(いちば)にも共通するのは、私が暮らし始めた時点では往年の…

第7回 私の東京

東京で暮らし始めたのは25歳の時だった。最初は物見遊山のつもりで浅草や上野の映画館に寝泊まりしていたけれど、この先どこかに行くあてもなかったので、賃貸情報誌を見て代々木の不動産屋に電話をかけ、掲載されていた中では一番安かった風呂もトイレもな…

第6回 隧道は今日もすいとう、という話

神戸には、今の新開地商店街がある位置に湊川という大きな川がかつて南北に流れていて、大雨が降るとたびたび水害を引き起こしていた。今から100年以上前の明治の昔、これから町を発展させていくにあたってこいつは邪魔だぞ、だってこいつがあるせいで「兵庫…

第5回 子育て世帯にとっての神戸の住みやすさ

「20分で晩ごはん」というNHKの番組がある。これはタイトル通りタイマーを20分にセットして時間内にプロの料理人が品数をそろえた晩ごはんをあわてふためきながら作るというもので、我々視聴者はその様子をハラハラと鑑賞するのだが、朝の私がやっているのは…

第4回 市バス7番に乗って

最近、町なかで他人が連れている生まれたばかりの赤ちゃんを見かけると無条件に「なんてかわいいんだ」と食いつき気味に見てしまうようになった。うちの子供はそろそろ2歳で新生児期(生後すぐの状態)もとっくに過ぎ去り、手足をバタバタさせているだけの存…

第3回 なだらかな起伏を駆け上がる

男はつらいよシリーズの最終作である「寅次郎紅の花」を見ていると、いささか唐突とも思える流れで1995年震災の年の長田区菅原市場周辺の風景が出て来る。実際は映画冒頭で、神戸でボランティア活動をしている寅さんの姿が描かれ、ラストに再びその時お世話…