『ごろごろ、神戸2』『ごろごろ、神戸3』

『ごろごろ、神戸2』『ごろごろ、神戸3』は2017年5月から2019年4月まで本ブログ管理者である平民金子が執筆し神戸市広報課サイトにて連載されたコンテンツです。現在神戸市広報課サイトに本コンテンツは掲載されておりませんので、このたび神戸市さんのご好意により本ブログへの転載許可を頂きました。記事の著作権は神戸市にありますが、書かれた内容についてはすべて執筆者にお問い合わせ下さい。本コンテンツに大幅に加筆をした『ごろごろ、神戸。』が株式会社ぴあより出版されています。そちらもよろしくお願いします。

第5回 子育て世帯にとっての神戸の住みやすさ

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「20分で晩ごはん」というNHKの番組がある。これはタイトル通りタイマーを20分にセットして時間内にプロの料理人が品数をそろえた晩ごはんをあわてふためきながら作るというもので、我々視聴者はその様子をハラハラと鑑賞するのだが、朝の私がやっているのはそれと似たような作業だ。録画リストの中から「おかあさんといっしょ」の再生ボタンを押して、放送終了までの24分間で、その日に出かけるための用意を子供の弁当から着替え、犬のごはんからトイレの掃除までし終える。見守ってくれる視聴者はいないのであせっているのは私だけで、エンディングへとつながる「ブンバ・ボーン」の歌とダンスの開始が体操のお兄さんから陽気に告げられた時には背中にうっすらと汗が滲んでいる。

赤ちゃんは、生まれたばかりの頃やハイハイで動いているあたりまではどれだけ大変であっても行動自体は親のコントロール下であるが、立ち上がって自由に歩けるようになってからは行動の主導権は子供が握るようになる。実際の力関係でいえば私が鍵を開けないと子供は自分で扉を開く事も出来ないので、勝手にどこかへ出かけられるわけでもないのだが、自分のリュックに好きなおもちゃを詰め込みそれを背負って扉の前で泣き叫び、外に出かける事を懇願されては、観念して外出する以外の選択肢はない。子供が自分の意思で散歩に行きたがる頃からが、子育ての第2ステージなのではないか。そしてその時期から問題になってくるのは、毎日のように子供を連れて外で楽しく過ごせる場所など世の中にはなかなか存在しないという事実だ。

しかし住んで初めてわかった事だが、神戸という町はそのあたりの環境がとても充実している。その飛車角と言えるのが我らが須磨海浜水族園王子動物園で、1年間何度でも入場出来るフリーパス券がそれぞれ3000円という安さで売られているから、両方買ってしまえば毎日どちらかに行っていれば子供は大喜び、大人である私も魚や動物の勉強が出来るので一石二鳥なのだ。

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子供向けの環境といえば元町駅からすぐ近くの神戸BAL地下2階にはボーネルンド社の「キドキド」という遊具付きの施設がある。乳幼児には専用の遊びスペースもあって、ここは土日祝日をのぞいた平日1ヶ月のフリーパス会員が3700円(最初の登録月のみ4400円)。これは水族園や動物園の破格の年間パス料金を見ていると感覚がおかしくなって高く感じられるかもしれないが、実際に利用してみればいかに良心的な値段かがわかる。平日の10時半から19時まで、車やバイクや自転車が一切来ずに安心して子供を自由に放てる室内スペースが市内中心部にあるというありがたさ。これは特に四六時中乳幼児と生活を共にする専業主婦層や、育休を取って1人でいっぱいいっぱいになりながら子育てしている母親には強い味方だ。これから梅雨に入れば天候に関係なく遊ばせる事が出来るのでますます重宝する。ちなみにこれはキドキドに限らずだが、こういった児童施設に行くと子供を遊具で遊ばせて自分はスマホを見ているお母さんをたまに見かけるが、私はその気持がめちゃくちゃわかる。「ここに来てようやくほっとひと息ついてスマホが見れる」という安心感。キドキドは今のところ全国でも21箇所しかないので、これが町のど真ん中にあるというのはとてもラッキーだと思う。

さらに神戸には最近、新生メリケンパークという子育て世帯に優しい大きな広場がオープンしたばかりで、私たち夫婦のように育児疲れ真っ最中の人は、明日にでもダマされたと思って赤ちゃんを抱いてこの場所に行ってみてほしい。晴れた日には空と海が大きく広がり、養生中のために立ち入り禁止だった広大な芝生エリアもいよいよ今月には全面開放される。子供が走り回る後ろ姿を見ながら心地よく深呼吸が出来る場所。閉塞感と隣り合わせの日々の暮らしの中で、この新しいメリケンパークに何度感謝したことか…。

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また個人的におすすめしたいのは「まやビューラインサポーターの会」という制度で、これは5000円で会員になれば摩耶山上まで伸びているケーブルカーとロープウェー(摩耶ケーブル摩耶ロープウェー)が1年間乗り放題になってしまう。

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つまり、王子動物園(3000円)、須磨海浜水族園(3000円)、まやビューラインサポーター会員(5000円)、メリケンパーク(無料)と合計1万1000円のお金を最初に出してしまえば、海から山から動物園から水族園まで子供を連れて1年間神戸を堪能出来てしまうわけで、月あたりに換算すれば1000円もかからずこれだけの環境を手に入れる事が出来るというのは、他の町にはない神戸の最大の強みだと思う。

そしてなによりも便利なのは、神戸は今挙げたような施設がすべて市内に集まっておりどこからでもアクセスしやすい点で、JR、阪神、阪急の各線も並行して付かず離れず走っているためどこかの駅まで行けばこれらの施設はすべて電車一本で簡単に行く事ができる。それぞれの施設が遠く点在するのではなく、これだけ簡単に各所に行き来しやすい町というのは他にない…………気がする。

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さて。ここまで書いた段階で私は、上にあげたような子育て世帯が楽しめる施設の充実ぶりを、あたかも神戸だけの特徴とでも言うように自信満々な気分で書いていたのだが、最後の最後になって「も、も、もしやあの町も……」と心配になった。それは横浜である。気付かないふりをして通り過ぎたいがそのような不誠実な事は出来ない。そこで、おそるおそる「横浜 動物園」「横浜 水族館」「横浜 キドキド」とインターネットの地図で検索してみると、おかあさん! あ、案の定横浜も全部そろってやがった! 横浜めちゃくちゃ住みやすそうじゃねえか! 私は急に、行った事もない横浜への対抗意識が生まれ、かつて横浜で働いていた事のある妻に対しおもむろに「神戸と横浜ってどっちが都会なんかな? 神戸の中華街と横浜の中華街ってどっちが大きいの?」と質問をした。すると(何言ってんだ…みたいな感じで)「ブフッ!」と吹き出されたので、私は安心した次第である。だよなあ! 神戸の中華街のほうがでかいに決まってるじゃんか!

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