『ごろごろ、神戸2』『ごろごろ、神戸3』

『ごろごろ、神戸2』『ごろごろ、神戸3』は2017年5月から2019年4月まで本ブログ管理者である平民金子が執筆し神戸市広報課サイトにて連載されたコンテンツです。現在神戸市広報課サイトに本コンテンツは掲載されておりませんので、このたび神戸市さんのご好意により本ブログへの転載許可を頂きました。記事の著作権は神戸市にありますが、書かれた内容についてはすべて執筆者にお問い合わせ下さい。本コンテンツに大幅に加筆をした『ごろごろ、神戸。』が株式会社ぴあより出版されています。そちらもよろしくお願いします。

第13回 神戸、安いかき氷特集

子供の頃は、夏休みともなると近所の駄菓子屋などで売られているカップ容器のかき氷を毎日のように食べていた。しかし成長するにつれだんだんと食べなくなったのが先か、近所から子供の小遣いで買えるような安いかき氷を売る店がなくなったのが先か、いずれにせよかき氷という食べ物は自分の人生からは縁遠いものとなった。しかしそんな私にとっての「かき氷 冬の時代」が忘れもしない今年の5月、メリケンパークでおこなわれた「神戸メリケンフェスタ2017」の会場で終わりを告げた。かき氷屋台に興味を示した子供に試しに買い与えた事をきっかけにし、まずは子供が、つられて(子供の食べ残しを仕方なく食べていた)私が、という順番でかき氷スイッチが入ったのである。

幼児といっしょに過ごしていると、自分の記憶にない時代を生きなおしているような気分になれる。生まれてすぐの新生児時代や1歳、2歳の頃、私はどんな風にして過ごしていたのか、今となっては知るよしもないが、子供を観察していれば「だいたいこんな感じだったのだな」とよくわかる。幼い頃の私も、いつかどこかで親に連れられてかき氷に人生で初めて接触した1日というのがあり、そこからかき氷人生が始まったのだろう。私が食べた第一号かき氷は不明なままだが、子供のぶんは記録した。これが記念すべき第一号の…いちご味だ!(だからどうした)。

f:id:heimin:20220327053645j:plain

この日から私と子供のかき氷行脚が始まったのだ。
なんでもさわりたがる(自分で食べたがる)あぶなっかしい2歳児を連れているので、ガラス容器で提供される本格的な専門店には行けない。目指すのは、私が子供の頃に食べていたような安いかき氷である。なぜ近所にこんなにもカップかき氷屋が充実しているのかはわからないが、深くは考えず、神戸とはカップかき氷の町なのだと思うことにする。まずは兵庫区和田岬の駄菓子屋「淡路屋」のかき氷から…。

f:id:heimin:20220327053651j:plain

お店に行った時は子供の誕生日が近かったので「なんでも買っていいよ」と商品を入れるバケツを渡したが、好きなように詰め込んだお菓子とおもちゃとかき氷にクレープを食べても数百円にしかならなかった。

次も駄菓子屋だが、長田区駒ケ林「フレンド」のかき氷。

f:id:heimin:20220327053658j:plain

f:id:heimin:20220327053706j:plain

8月5日(土曜日)は神戸で一番規模の大きい「第47回みなとこうべ海上花火大会」が開催される。
私はフレンドのお母さんが聞かせてくれる花火大会の思い出話が好きだ。
気になる方がいたら、100円玉をにぎりしめて現地に行ってお母さんとしゃべってみてください。

淡路屋もフレンドも、今時こんな駄菓子屋が町の中にあるのがすごい。佐野由美著『路地裏に綴る声』(株式会社くとうてん)には彼女が子供の頃に通った「ふくだ屋」という駄菓子屋の思い出がスケッチで描かれている。残念ながら「ふくだ屋」のように震災や時代の流れでなくなってしまったお店も多いのだろう。
大阪の私が生まれ育った町にはもう一軒も駄菓子屋は残っていない。
そんな感傷はよそに、次は新開地ボートピア舟券売り場)の売店「やつどき」に行きます。

f:id:heimin:20220327053709j:plain

かき氷のお店を紹介するのに新開地のボートピアをあげるのは、自分で言うのもなんだが「ごろごろ、神戸」だけだと思う。たこ焼きとかき氷を注文しても350円なので、なんだか申しわけないような気分だ。

f:id:heimin:20220327053716j:plain

店の前にカウンター机がありそこで立ち食いが出来ます。ただこの場所はあくまでも時に一杯飲みながら、舟券を買いにくるおっちゃん達が主役なので、お邪魔してすいません…というような気持ちで控え目に食べています。
あまり紹介される場所ではないけれど安くて美味しい。
次は東山商店街の「たこ福」に行きましょ(ホントかき氷ばっか食べてんな…)。

f:id:heimin:20220327053722j:plain

迷宮商店街なので場所を説明しにくいのだが、珈琲館「東山」の向かいです。ここは店主さんが沖縄を愛しているので、かき氷だけでなく「沖縄ぜんざい」も食べる事ができる(かき氷と氷のカットが違う…)。

f:id:heimin:20220327053727j:plain

氷の下に自家製の金時豆煮がかくれています。
あとミルクセーキは長崎風。

f:id:heimin:20220327053733j:plain

ミルクセーキというとジュース状の飲み物しか知らなかったのですが、長崎スタイルがある事をここで初めて知りました。商店街のおかげで私はどんどんかしこくなっていきます。
あ、西元町の「メルカロード宇治川」商店街入口(線路側)近くの氷屋さんを忘れるところだった。

f:id:heimin:20220327053740j:plain

f:id:heimin:20220327053748j:plain

ここは店の前の道路が広いのでベビーカーでも楽勝です。
私のような幼児連れが気楽に行けるかき氷屋さんの条件としては、「出来れば路上で食べられる(お店の床を汚さずにすむ」、「容器がプラスチック製のカップである(ガラス製だと割ってしまうのがこわい)」というのがある。
今せっかく私の中でかき氷ブームが到来したので、子供の頃には食べられなかった専門店の高級かき氷なんかも食べ歩きたいけれど、いかんせん子供を連れては厳しいんだよなあ。
だから今回は、必然的に外で食べられるかき氷ばかりを選ぶことになりました。
値段はいちいち書かなかったんですが、すべて100円~200円代で、子供の頃をなつかしみながら親しみを込めて「安いかき氷」と呼んでいます。

さて、最後に紹介したいのは須磨海浜水族園の本館3階にある「うみがめのお店」のかき氷。

f:id:heimin:20220327053754j:plain

海亀を見ながらかき氷を食べられるのはここだけ……(な気がする)。
ここのお店にはポイントカードがあって、スタンプを10個集めたらスタッフさんが自分で作った(!)海洋生物のフェルト人形がもらえる。ポイントを集めている人がはたして何人いるのかしりませんけど、私はこの前エイの人形をもらいました。どんだけ通っとんねん。

f:id:heimin:20220327053827j:plain

子供を抱いている時、つい癖のように「アンパンマンたいそう」の歌を口ずさんでしまう。
もし自信をなくしてくじけそうになった時には、「良いこと」だけを思い出していこうや、そんなシンプルなメッセージが歌われているだけなのだが、子供がくじけそうになった時にふと思い出す「良いこと」のストックを私はこれからどれだけ作ってやる事が出来るだろうか。

並んですわってかき氷を食べている毎日が、子供にとっての「良いこと」になってくれればうれしいなあと思ったりもするけれど、この蒸し暑い夏の日々も、氷でほっぺたを冷やして笑い合った事も、やがてはアンパンマンたちと同じように子供の記憶からは消えていく。
それでいいや、その儚さもまた、夏っぽいなと思うわけです。

f:id:heimin:20220327053844j:plain