『ごろごろ、神戸2』『ごろごろ、神戸3』

『ごろごろ、神戸2』『ごろごろ、神戸3』は2017年5月から2019年4月まで本ブログ管理者である平民金子が執筆し神戸市広報課サイトにて連載されたコンテンツです。現在神戸市広報課サイトに本コンテンツは掲載されておりませんので、このたび神戸市さんのご好意により本ブログへの転載許可を頂きました。記事の著作権は神戸市にありますが、書かれた内容についてはすべて執筆者にお問い合わせ下さい。本コンテンツに大幅に加筆をした『ごろごろ、神戸。』が株式会社ぴあより出版されています。そちらもよろしくお願いします。

第10回 いつまでもそのままで

先週、神戸新聞に3つの気になる記事が出ていた。三宮の駅前再開発と須磨海浜水族園および周辺再開発、神戸最大の個人商店密集エリアにあるミナイチ営業終了とビルの建て替え。どれも初めて知った話ではないのだが、こうも大きな再開発にまつわる記事を立て続けに読んでしまうと、さすがにこれからの数年で神戸の景色はずいぶん変わるだろうなと、考えこんでしまった。
三宮は書いた事はないが、他の2つは何度も『ごろごろ、神戸』で取り上げているなじみ深い場所だ。

神戸三宮の高層ツインタワー 屋上庭園に「世界一美しい図書館」(9月12日)

須磨水族園と周辺を再整備 ホテル、カフェ集客狙う(9月13日)

前身から100年 庶民の台所ミナイチ営業終了へ(9月13日)

これらのニュースに合わせて、元町高架通商店街(モトコー)の再開発や、旧中央卸売市場跡地に昨年巨大なイオンモールが出来た事、あとは近年各地で老朽化した市場が取り壊されてマンションになっている事情などを考えると、これからの神戸の町が進んで行く方向が、なんとなく見えてくる気がする。
それはある人にとっては輝かしい未来だけれど、ある人にとっては良き時代の終わり。
今さら書くまでもなく、小さな路地裏や市場、個人商店、住民とともに年を重ねてきたような建物が好きな私は、こういった町の発展をただ明るく、希望的観測だけでとらえる事ができない。

私が思う神戸の宝物。それは古くからある市場や食堂や喫茶店であったり王子動物園須磨海浜水族園の古びた遊園地であったりするのだけれど、それらのものは今後増えはせず、減っていく一方だ。その速度がいささか早まったような気がして、身構えてしまう。日本は災害が多く、建物には寿命があり、何事にもいつか必ず終わりが来る。
そんな反論のしようがない正しさが、理屈としては理解出来るからこそ、「簡単に壊してくれるなよ」「さびれた市場がそのまま残っていてもいいやん」「神戸って今のままでめっちゃええ所やん」なんて気軽な事がなかなか言えず、とまどってしまう。

取り壊しとマンション建設が現在進行形で進んでいる兵庫区の稲荷市場周辺を歩きながら、「いつまでもそのままで」と呪文のように、心の中で唱える。いつまでもそのままで、古い町なみや商店街がそこにあってほしい。
けれど、その言葉には何の有効性もないし、呪文がどこにも通じない事も理解している。
夜中に、半分取り壊されたひと気のない市場の狭い通路を歩く。台風でシャッターが吹き飛ばされたままの、今はもう営業していないたくさんの店の前を通ると、海底のように静かなその場所から、ほんの数十年前には確かにあった笑い声や行き交う人々の喧騒が聞こえてくる気がした。

近い将来きれいに生まれ変わる三宮駅前や須磨海浜公園や神戸新鮮市場は、きっと素敵な場所になるんだろう。
また新しくたくさんの人が集い、また新しいにぎわいを見せるのだろう。
それでも、壊れ行く市場の片隅で「いつまでもそのままで」と小さく唱えたことを私は記しておきたい。

そんなことを考えながら、「ここだけはどうか、ここだけはどうかそのままで……」とつい願ってしまう最高施設、須磨浦山上遊園山陽電車須磨浦公園駅下車すぐ)の回転展望閣で今ちょうど毎年恒例のお化け屋敷が開かれています。ですので、ここを読んでおられる1億3千万の方はぜひ行ってみて下さい。
山陽須磨浦公園駅を降りてすぐ。ロープウェイとカーレーターに乗った先です。
大丸百貨店のお化け屋敷のように大人が行ってガチで怖いという種類のものではなく、「はじめてのお化け屋敷」と題されているように小さい子供が楽しめる、手作り感いっぱいのイベントです(もちろん大人だけでも大丈夫)。
全6日間のうち前半が終わったところなので、次は後半3日間。
9月22日(土曜)、23日(日曜)、24日(月曜・祝)に開催です。
時間は11時から16時まで。1階では須磨浦縁日として魚つりゲームや、スーパーボールすくいが出来ます。

会場である回転展望閣の屋上から下をのぞいてみると、美しい景色とともに、台風で大きな被害を受けて今もなお閉鎖されたままの須磨海釣り公園が一望できます。今はまだ復旧に向けての具体的な見通しも立っていない状況ですが、もし奇跡の復活を遂げた際には、プラスチックの魚を引っかける釣りゲームしかした事のない子供を連れて真っ先に駆けつけようと思います。私もまた、漫画『釣りキチ三平』を繰り返し読んだ事があるだけで本物の釣りはした事がないんですが……。(第X回『復活! 須磨海釣り公園』篇に続く)