『ごろごろ、神戸2』『ごろごろ、神戸3』

『ごろごろ、神戸2』『ごろごろ、神戸3』は2017年5月から2019年4月まで本ブログ管理者である平民金子が執筆し神戸市広報課サイトにて連載されたコンテンツです。現在神戸市広報課サイトに本コンテンツは掲載されておりませんので、このたび神戸市さんのご好意により本ブログへの転載許可を頂きました。記事の著作権は神戸市にありますが、書かれた内容についてはすべて執筆者にお問い合わせ下さい。本コンテンツに大幅に加筆をした『ごろごろ、神戸。』が株式会社ぴあより出版されています。そちらもよろしくお願いします。

第42回 大丸屋上で豚まんを食べるフェス

世の中にはバーベキューや野外フェスに気軽に誘ってもらえる人間と、決して誘ってもらえない人間の二種類がいる。前者はつまるところ「こいつがいたら楽しいな、役にたつな、いても邪魔にならないな」と人に思われるような存在で、問題は私のような後者の存在だ。酒を飲みはじめると一点を見つめて黙り出すので場は盛り上がらないし、料理には手をつけず、人との関わりを避け、自発的に何かを手伝う事もせず自分だけの世界に耽溺(たんでき)する。書いていてつくづく思ったが、バーベキューやフェスに誘われない人間が、なぜ誘われないか。それは誘うメリットがないからだ。しかし我々は負けない。団体行動が不得手ならば1人でも参加出来るイベントを企画しよう。

先週はいかなごのシンコ漁解禁について書いたが、神戸にはこの時期に解禁される、もうひとつの重大なイベントがある。それは大丸屋上で行われるアウトドア551だ。各線元町駅を降りてすぐの、みんな大好き大丸百貨店の屋上は、特に集客施設があるわけでもなくベンチとテーブルが置かれているだけで、普段はそれほど人がいない。ただ、百貨店屋上はどこでもそうだが都会の真ん中にありながら景色が開放的なので、子連れの人にはなかなかにおすすめ出来る場所なのだ。アウトドア551とは参加者が自ら購入した蓬莱の豚まんをそこで静かに食べるフェスである。いちおう私も大人なので、大丸さんありがとう……と思いながら、ここに来る時には大丸地下一階の食品エリアから何かを買うという遊びのルールを決めている。「アウトドア四興樓」「アウトドア廣林店の野菜まん」だったらなんか悪いやん!

すでに書いたが、現地では特別な景色が見られるわけではない。遊園地があるわけでも何か売り場があるわけでもない。つまりここに来てもする事がないので、それが幸いしてか、けっこうすいているのだ。ベビーカーを押して三千里、私はこう見えて「神戸市内、ベビーカーでも気をつかわずにくつろげる場所研究家」なのだ。混んでいる店はしんどい、小さい店はきびしい、人がいなくて広い場所、赤ちゃん泣いても大丈夫、特別なサービスはいらない、贅沢な味もいらない、必要なのは誰にも気をつかわずにすんで気楽にくつろげる、柵があって自転車も車も通らないスペース。つまり大丸百貨店の屋上こそがキドキド元町店なき後の私たちのオアシスである。

子供と向かい合って豚まんを食べながら、私は若い頃から孤独に慣れ親しみすぎてイベント事にまったく呼ばれない人生になってしまったが、きみはどうか多くの友人たちに囲まれてにぎやかな人生を過ごしてほしい、などと勝手な事を考えてしまう。子供よ、もし将来きみが友達100人に囲まれる人生を歩めたとしたら、この記事を読んだ時に私の事をどうしようもないおっさんだったなと思い出して笑ってくれ。もしそうじゃなく、1人ぽつんと過ごすことが多い人生だったらば、この記事を読んで今日のことを思い出し、これはこれでなかなか楽しそうじゃないか、なんてくすっと笑ってくれ。1人で楽しく過ごす方法なら星の数以上に私は喜びを持って伝えられる。アウトドア551の未来はきみに託した。


【ベビーカーで行きたい人のための写真解説】
ベビーカーで会場まで来る場合、海側のエレベーターではなく、山側(トアロード側)のエレベーターを使わないと屋上直結の10階までは上がれません。写真のあたりにベビーカーを置いて「く」の字の階段は歩きです。(ちなみに、別にわざわざ目の前の階段を上がる必要もなくて、このまわりにもたくさん椅子や机が並んでいます)

ここまで登ってくる人はそれなりにいるけど、私の観察では多くの人が「いちおう来てみたけど、何もない……」みたいな感じですぐに引き返してしまうので、満員になる事はないと思います。

今日は551と「おこわ米八」(いずれも地下1階)の豚生姜焼き弁当でランチタイム。豚まんとおこわ。メニューはすべて子供の好みで決まる。

ここで身もフタもない話を書きますけど、苦労してフェス会場である10階に行くよりも、8階からみどりの広場に抜ける方がベビーカーだと行きやすい。ここだと山側、海側どちらのエレベーターからもアプローチ出来ます。みどりの広場も良い意味で何もない場所なので、元町に来たついでにここで深呼吸をしたり「ワー!」とか言ってみてください。